時給いくらで、働こう
番田 


何もない街の中を歩くと喜びがにじみ出る
言葉を無くした人間のようでいて 悲しい
今日は強い日差しが降っていた
アルバイトから帰ってくる若者たちの 明るい顔
君たちは 何を求めて 生きているのか


列車に飛ばされた石ころが草に跳ね返って飛んでくる
この石を運んだ機械はいったい どんな人間だったのだろうと思う


街はざわめきを増して いくつもの食料を運搬する自動車が 出入りする
ここがロシアであったなら 考えられない話しだ
すべての物流の速度は 遅れているから
人々が食べ物にありつけるのは行列に並んだ後になる
今日はファミリーマートのトラックを バス停で見かけた


時代は流れていくけれど 変わらないものは一体なんだ
心臓の脈打ち煮えたぎった体は血管を逆流する


選挙運動が意味する言葉に具体的な言葉はどれだけあるのだろう
拡声器で怒鳴っていることに嘘であるものは どれだけあるのだろう


(自転車を 漕ぎながら
(小学生の頃の 友達の家の裏を通過する
(君はあれから どうしている
(僕は失業してうれしい涙を舐める日々だ


国鉄の電車が昨日も出ては入っていくのを高架橋のホームに見た
人間が何人も束になり運ばれていくのは 哀れだ
キオスクのおばさんは 何を思って それを見送っているのだろう
タクシードライバーは 何を思って 色々な人間を運んでいく
私は今日もひとりで それらの光景を 詩に 刻み込んでいる




自由詩 時給いくらで、働こう Copyright 番田  2010-11-18 03:35:21
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