冬が来る前に
花形新次

冬に一歩ずつ近づいて
通りの桜並木の葉も
完全に散って
僕と君との思い出は
遠い過去のものになろうとしている

大丈夫かな?
大丈夫だよな?

繰り返し呟いていた
確かなものは何一つなくて

ダメかな?
ダメだよな?

君と寄り添って歩いていても
不安でたまらなかった


朝晩の気温は低くて
道行く人の服装も
暖かそうになって
でも僕と君との関係は
もう修復不可能なところまできている

大丈夫かな?
大丈夫だよな?

そんなことばかり気になっているから

ダメかな?
ダメに決まってるよな?

君と腕を組んでいても
気持ちは暗く低いところを彷徨っていた

大丈夫だと
言ってほしかったのは
僕ではなくて
君のほうだったんだ
そんなことさえ
あの頃の僕は気づけないほど幼くて

ダメだね?
そうだね・・・。
二人は静かに笑って
それぞれの方向に歩き出した


自由詩 冬が来る前に Copyright 花形新次 2010-11-16 22:37:19
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