退社時
朧月

どうして夕闇は
せかすように美しいの?
置いてゆかれる不安はもうないのに

雑踏に踏み入れる勇気が
ないのにたどり着いた
いつもの という駅

帰ろうとつぶやくと
さみしくなるのは なぜ?
また という改札

手と手じゃないのに
離れるのは息がとまりそう
あなたとの距離は遠くしたくない

何度やっても計算があわない
とあなたが差し出す書類には
未来につながる数字たちが
整然と並んでる

はじいて
正確なこたえはでるけど
まじまじとみたあなたの横顔
不思議な気がする
私のオフィスは古い型のものしかないのに


夕闇にせかされつつ帰る
瞼が水分を含みつつある中



自由詩 退社時 Copyright 朧月 2010-11-16 17:19:03
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