逃げる
阿ト理恵

所沢航空公園で昼寝していた犬と目が合ったからにゃんと挨拶してミドリの窓口から森へムンクの森へ備えないから憂いもある改造屋からにげます

逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう

新青梅街道で女の子と歩きながらキスしてアオの窓口から海へフォロンの海へかき撫でられない養えない血の不良債権取り立て屋からにげます

逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう

お茶の水の夜の酒場でアルカリ性凍結梅酒を飲んで元祖になってアカの窓口から火のなかへゴッホの炎のなかへへなちょこボディなトラバントぼこぼこにしながら春の波動からにげます

逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう

池袋のラブホテルの裏口に汚れたビニル手袋がいくつもいくつも干してあったので汚れなかった手は森からおかえり海からおかえり炎からおかえりおかえりおかえりおかえりおかえりなさいませからキの窓口から気の樹のなかへにんげんもどうぶつもしょくぶつも影は
同じ黒なのですから
すべからく
すべからく
心音心寝心根真寝芯根信根真音、しん、ね
心拍数、ね、きにしなくっていいの
ぼくはあなたのやきかたしってます
メープルシロップかけてたほうがおいしいね

たとえば
いわゆる
これが
終わっちまったたましいを洗ったら縮んだので、なあんだ毛糸だったのね、羊だったのね
たましいわ
たのしいわ

地下鉄の階段を駆け降りて
にげるの
こげるの

地球のなかまで
おいかけてくれるかしら
あなた
わたし
ぼく
きみ
真摯服きてきてね
音のからだは早いのよ






(1997・8ユリイカ/1998・10阿ト理恵大全集掲載)





自由詩 逃げる Copyright 阿ト理恵 2010-11-15 16:05:55
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