Rain
時間が蕩けるアインシュタイン

 私は凍てつく雨粒に塗れて居る。空もアスファルトも真っ黒で、私は脳裏に流星の雨、全ての宇宙を思い浮かべ、其れ等全てが記憶の粒子として脳に埋葬される事を夢みて居る。今年の十一月は毎日が素直な冷たい雨の天候で、私の皮膚感覚、全ての心が私の体から離れ、アスファルトに投げ出される。全ては無に帰し、再び私達の元へ舞い戻って来る。金髪の高校三年生は、十一月の豪雨を疾走するリニアモーターカーで在り、卓越した私の発想力の友人で在る。
 長い冬眠生活を終えた蝦夷地のホッキョクグマは、私達の鮭や海豹を鱈腹食い尽くす。春に成れば、薄いカーディガンの様な憂鬱は風に乗って飛んで行き、私の全世界で只一人の女性が弥勒の来世が華々しいものであると確信させてくれる独身時代に終止符を打つ。私は全てを超越し、神でも仏でもない、この全ての世界にボレロを均等に掻き混ぜるのだ。名残惜しい惜別の私の詩の文章達、札幌から旭川に向けて吹き荒ぶ寒気。旭川の祖父の家の真ん中の炬燵以外全てに降り注ぐ冷たい雨の音楽を分解し、この弱々しい心では母も自分も守る事ができない、心の人に嫌悪されるのではないかと、私が創造したフロイトに裏切られた恐怖に押し潰される。
 午前六時に私の黒い憂鬱が水溜りと成る、事を期待して、希望が青空に弾け飛ぶ。大空に向かって真っ直ぐ其れが突き進み、念の為に全てに恐怖、絶望し、地獄という名の現実の地上に一度身を切り裂き、そして再び君の御心を深く傷付けてしまう。
 何か私の作品に意味等在ったのだろうか、不眠症が続く北欧の森にて、私の想像力は私にそっと口付けする。何が正しくて何が正しくないのか、只、北欧には、特にスウェーデンには私の卑しい欲望の雨が降り積もるだけである。女の君、其れは私が天国への梯子から引き上げた美しきもう一つの孤独で在る。私はこの先、どんな人間に成ったとしても、一人ぼっちに成る事だけは絶対に無理である。適当に言い当て嵌めた毒の塗られた鋭利な言葉に深く傷付き、自殺を選んだ弥勒、私は二段階目の地球をアスファルトで撥ねる。
 幾つもの森を太陽の眼鏡と共にリニアモーターカーで通過するミニチュア。星々は地上に沈み、土と泥に温かく包み込まれよう。万物は私の空耳に依り著しく混乱を極め、生物学者の命を罵倒する。軽々と私の魂の結晶は批評に依って土俵の外に破棄され、世界の空間は記憶喪失に、痴呆に、空き巣の燕に乱暴を働かれよう。この感情だけは誰にも、譬え君にすら、いや、其れはない。全ての魂は其れ等の先端に釣り針を引っ掛けられて、弥勒の心で安らかに眠る。己の全ての理想の相手の心の声という実在は、救世主の出現よりも尊いものだ。
 聖典の角が欠けて居た。私達はものを大切にしなければならない。死後の世界がどんなに極楽であろうと、私は君ともう二度と巡り逢えない気がして。何が権威だ、何が名誉だ。業の雨。私の妄想、想像力は煉獄の谷間を越えて、上昇するのか、其れとも地獄へ下降するのか。古の中国の詩人達の詩を全て夢想、この鳥肌が平坦なサバンナと成る時、私は百獣の王の背に跨り、心臓を射抜かれた夕日に向かって、決して死ぬ事も没する事も無い夕日に向かって、燦然と輝くこの胸から放たれる光の雨に依って、世界の重力をあのニュートンに仕向けてやるのだ、しかし彼もまた本当の事は言わなかった。


自由詩 Rain Copyright 時間が蕩けるアインシュタイン 2010-11-14 05:55:55
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