ヴォルガ考
吉岡ペペロ

おんなとわたしもまた

時間や空間や生命のいちぶをなした

ちいさな文明にちがいなかった


川は文明のゆりかごだ

ヴォルガをみつめていてそんなことを考えていた

青と灰いろにそめられた川景色は

ひとびとの乱痴気騒ぎと

おんなじようにちぎれているようだった

青にちぎれた妖精たちが

灰いろの不穏を藍色にかえてゆらしていた

となりのおんなが川をみつめている

川はどうやらみつめられるためにだけ存在している

おんなはなにをみつめているのだろう

さっき視界にはいったばかりの

わたしとの十年後をかんがえている

川は文明のゆりかごだ


おんなとわたしもまた

時間や空間や生命のいちぶをなした

ちいさな文明にちがいなかった






自由詩 ヴォルガ考 Copyright 吉岡ペペロ 2010-11-13 23:44:08
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