塀を乗り越えたかった猫は
森の猫

都会のマンションで
生まれ育った猫は
その3LDKが全てだった

たまあに
ベランダで日向ぼっこをする

エアコンの室外機に
ぴょんと飛び乗り

滑りやすい
手すりの上に登ると
前の都道がみえる

地域猫たちも徘徊する歩道

ある日
猫は

少し カラダの大きな
茶トラの猫を目にした

長いしっぽをピンと立て
ゆったりと
縄張りの巡回をしているようだ

はっ

猫の小さな胸は
ドキンとした

なんだろう
このキモチは・・・

猫は外に出るのは
年に一度のお注射のときだけだ

なんか
あたしも
外猫たちと混ざって

話に聞く
猫集会にでも出てみたいな

あの 茶トラくんも来るのかな

猫は
ベランダに出ると
注意深く 茶トラの猫を
探した

あっ
きょうは 
あのブチのオンナの子と
お鼻すりすりしてる・・・

ドキン
こんどは 胸が痛む

短いしっぽのあたりが
ぴりぴりする

この手すりから
あの木に飛び乗って

なんとか
フェンスを越えられる
かしら

なんども
なんども

かんがえた

おもいはつのる

 にゃ・・ぁ

なんだか
カリカリもすすまないわ


すこし
痩せてしまった
飼い主さんが
心配している


あたしが
茶トラくんと
会いに行ったって
なんになるの?

地域猫でもないのに

子ねずみ一匹
バッタひとつ

自分で捕った
ためしがないのに

それにあたしは
手術済みの飼い猫

メスのアピールに
たりないわ

もう冬になる

猫はあきらめた

でも
でも

いちどでいいから
草むらの草にまみれて
ノミのつくのも
気にせず

茶トラくんと
じゃれあいたかった

いちどでいいから
塀を乗り越えて


自由詩 塀を乗り越えたかった猫は Copyright 森の猫 2010-11-13 10:37:34
notebook Home 戻る