フランダース
月乃助
赤く染まる
芥子の花が咲き
乱れる
どこまでも続く
白い墓標の列
海鳴りの
やむことを知らぬ町
忘れようとしても
消え去らぬ 戦跡
頭を垂れ
十字架の色に報いようと
悼みを詩う
海風に鐘の音をのせ
固く結んだ手の先から ながれる
届かぬ涙の冷たさに気づきながら
一途に祈りを込めて、
時代が違うと
見ぬふりをしても
命を落とした兵士達の無残な
海辺に残された足跡は
消えずに、
隙間をみたすこともできないまま
静かに、静か過ぎるほどの
消え入るような声を聞こうとして
揺れる 一面の花を見据える
人を無口にする美しさの
意味など分かりようもないのに
気まぐれな 海鳥の鳴き声に
命の重さを測りながら
くだらない期待に
自分をだますように
目を閉じては 幼子の夢のような
つぶやきに触れる
この世に 数え切れぬほどの
人の命をかけるほどの
人を殺めるほどの
許される理由を探しながら
無力という罪をくり返し
姿ばかり幻の一人になった顔をして
ひとり意地をはって 花たちの
話に耳を傾ける