心をしるす
さだあいか (サダアイカ (aika))

刺青を
くっきりと
しるす
誰にもみられない場所へ
一生消えない
宝物みたいな
罰だ

いつか
すみずみまで誰かの役に立ちたい
わたしが死んだのなら
必要な人に角膜をあげてください
もし脳死になれたのなら
臓器のひとつひとつを
必要な人に渡してあげてください
お願いだから
いつの日か約束を破り死ぬことも
わたしの亡骸が傷つくことも許してください
悲しまないでいいのです
わたしは永遠にあなたのお母さんです

わたしの体はバラバラにして
わたしの想いから解き放たれ
わたしを捨てて
性別もなくなって
誰かの一部になって
どこかですみずみまで
すみずみまで
誰かの役にたって
ひとりひとりの苦しみや幸せを
憎しみや愛を
かすかに感じて

わたしは
ずるくずるく生きていく
消えない体で
生まれた感情が
大切な人たちをないがしろにしたから
罰を与えた
もう二度と会うことも
話すことも出来ない
とけない呪文をかけた
たとえ宇宙の果てまでたどりつけても
消せない
刺青は
誰にもみられないで
ひっそりと花が咲くみたい
もうわたしの中にしっかりと刻みこまれていて
香りみたいに想いがもれて
空を漂いにじみ
どうしたって消えない
わたしの中の女が
わたしの体が
わたしを
忘れたとしても

ねえ
ずっと信じられずにいたけれど
心ってやっぱりあるんだわ
感じる
ここに
ほらここに
温かく脈打つ
見えない刺青は
生きている
光のない
青い太陽のようだ
今すぐに取り出して
握りつぶして
消してしまいたいのに
見えなくて届かない
永遠や
伝えられない
愛みたい
止まらないで
ただあるだけの


体は
誰かにあげるために
ひとりでに時を刻み続けるから
笑って
わたしは
ひとり
刺青と歩いて生きて
生きてゆく
永遠や愛や光を死ぬまでみつめて


自由詩 心をしるす Copyright さだあいか (サダアイカ (aika)) 2010-11-12 17:06:33
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