Marking
寒雪


そばにいる
おまえから漂う臭いを
おれは嗅ぎたい
手を伸ばしても
おまえの体に触れられないように
おまえの無臭な体は
おまえを不用意に遠ざける


冷蔵庫のボンレスハム
どぶ川のヘドロ
道端の犬のふん
商売女の香水


どうだ
己という存在を
おれに見せ付けようと
鼻の穴に殺到してるだろう


おまえからは
おまえという臭いを感じ取れない
そばに立っているおまえは
蜃気楼のまがい物
いつまでたっても
おれの手の平になに一つ得られない
たとえ小便の臭いでも構わない
それがおまえを手繰り寄せる
扉を開く鍵となるのだから


自由詩 Marking Copyright 寒雪 2010-11-10 07:03:38
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