転々
salco

ヨドバシカメラ大ガード店向かいの雑居ビル
六階にはやはり怪しげな不動産屋が入っている
階下の換気扇が焼き鳥の煙を噴き上げる
ドンキの店頭商品じみた事務の娘は
毎度同じ罵り言葉を吐きながら窓を閉める
社員は揃って二十歳を過ぎたばかりの男の子達
連日の超過勤務に陽気な背骨が食われて行く
どいつもこいつも十年後には
劣等感で錆びた肺から
薄っぺらい優越感を吐いて気を晴らすのだろう


訪れるのは不安と不満を抱えた店子達
誰も彼もが本籍地がふるさとの
大学生や派遣社員
キャバクラ、ソープ、デリヘル嬢と痩身のカレシ
日焼けた項と酒焼け顔のくたびれたあぶれ者
敷金・礼金0の契約書とヒエログリフで書かれた約款
真新しい三文判を手に手に
ワンルームマンションで羽をもがれながら生きて行く
確実に何割かはやがて
築三十五年のアパートでケツの毛まで抜かれてしまう
東京賃貸生活
果てなき車輪の空転


自由詩 転々 Copyright salco 2010-11-09 23:12:28
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