新大久保デート
快晴

好きな女の子とデートして
「何処か行きたい?」と訊ねたら
「何処でもいい」とその子は答えた
今までの経験上、大概の女の子は
「何処でもいい」が口癖らしい

だけど突っ立っていても仕方がないから
僕は「新大久保に行きたい」と言った
その子は少し怪訝な顔をしたけれど
コリアタウンに行きたいんだと話したら
なんとなく理解してくれたみたい

新大久保は新宿と高田馬場の真ん中にある
だけどここは「東京」じゃない
あくまでも新大久保という独立地帯
日本語なんて滅多に聞こえてこなくて
異国みたいでとにかく愉快

駅を離れて行けば離れて行くほど
新大久保は「東京」じゃなくなって
路上では豚の頭がそのまま売られ
食料品店なんかに入っても
日本語しか話せない方があくまで余所者

僕は牛の尻尾の骨がこんなに安いとか
「これはどこの部分だろう?」とか
そんなことをひたすら話して歩き回った
ビニール袋に詰め込まれたキムチが欲しくて
その子に相談したら顔を伏せて笑ってた

僕は牛の内臓の冷凍されたやつやら
結局、キムチも袋を何重にして買い
僕はそんな戦利品を誇らしげに抱えていたけど
帰りの電車でその子は終始俯いていた

その子とはその後に何度も会ったけれど
何故かその子との記憶はその日が最後
「何処でもいい」と言うくせに
女の子というのは全くもって難しい


自由詩 新大久保デート Copyright 快晴 2004-10-24 06:30:15
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