ナギ
砂木

叫びながらカラスの群れが飛んできた
初雪も消えて見えなくなった秋の空
会社に向かう朝の空気が緊迫する

運転しながら ちらりと眼を向ける
トンビが小さな鳥を追いかけている
死に物狂いに逃げる白と黒の小さな鳥
その二羽を カラスの群れが追いかけていた
真直ぐな道からカーブにさしかかると
みんな 視界から消えた

昼休みに会社の窓から空を見ると
電線に カラスが三羽 小さな白と黒の鳥が二羽
仲良く隣り合わせに それぞれとまっている
あんなに近くにいるのに威嚇しない
種族が違っても 仲間なのだろうか

ナギ とヒキナギの名前を呼ぶ時
馬鹿げているといつもどこかで思っている
通じるわけがない 相手は野性の鳥だ
飼いならす気もないし共に生きられるわけじゃない

たまたま近くに巣を持ったから親しみを持ち
生きる気力を貰った鳥
この冬を迎える寒さに死にませんように
ふと願い気にしているのだ ナギ と呼び

朝 出勤のため車を走り出させたら
上を飛ぶ鳥がいる
チチチ と 響く鳴声
まさかと思い空をみると ナギだ
黄色と黒の体が 真正面の木の上に止まる
ナギ なんだか大きくなって
チチチ と 高い木の上から私を見送っている
ナギ 行って来ます 行って参ります

時々 車に寄り添うように飛ぶ鳥を
私は自分の都合のいいように
飼いならした妄想の餌食にしているのかもしれない

私の事なんて誰もほんとは知らない
知るはずがない 私もあなたを知らない

それでもこの心に寄り添い鳴き続ける響きを
ナギと呼び 名前にとまり続けて行く

逃げ切る 爪から くちばしから
カーブで チチチと ナギが揺れる



自由詩 ナギ Copyright 砂木 2010-11-07 19:25:47
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