ジェンガ
田中ましろ
ゆるやかな好きに支配された部屋で夜が明けるまでジェンガをしよう
伝えてはいけないことに無邪気さを添える あなたのとなりは黄色
真顔にはならない感情は見せないあなたに恋を強要しない
まっすぐな狡さを矛にして強くあなたを貫くことができたら
ためらいととまどいの色 音もなくカシスウーロンの氷は溶ける
諦めたように言い聞かせるように呼吸をあわす言葉をさがす
言葉では見つけられない答えから逃げだすように触れるくちびる
どちらかが甘えてるってわけじゃなくピンキーリングは外れて落ちる
なにもかも間違ってても手のひらは涙をぬぐうための大きさ
傷つかぬ距離をたしかめあうようにポケットでつなぐ右手、左手
僕じゃない誰かと重ね合わせてもいいよ 飲み込む言葉は苦い
あっけなくあなたは去ってゆく 僕のこころ散らかす嵐みたいに
散らかったまま散らかったままふわり朝が来たからぼくらは帰る
思い出し笑いは自由 始発には誰かを想う人があふれる
一度だけあなたが抱きしめてくれた意味をいまごろ探してしまう