指輪
森の猫
26年目の記念日
落ち着く和食居酒屋の個室で
あたしは
貴方に
指輪ケースを差し出した
もう一度 はめ直して
いつの頃からか
あたしの薬指には 指輪の跡さえ
なくなっていた
指輪は しまい失くしている
だから これはあの日
あたしが貴方に送ったもの
Y to N と刻んである
少し照れながら
貴方はあたしの
左薬指にはめる
ゆるゆるの指輪
これからの 25年に乾杯!
熱燗とビールで各々祝杯をあげる
あたしは 久しぶりのたんぱく質
お刺身をつつき
貴方は 熱々の大根のおでんを
ほおばる
ホントは イタリアンのレストランに
しようかと思っていた
だめなんだ 俺 オリーブオイルに弱くって・・・
えっ? あたしも!
なぁんだ。
こんな ところまで
似てしまっているふたりだった
貴方と一緒だと
とってもキモチよく酔える
お銚子 2本で
足がもつれる
でも安心
貴方の左腕があるから
この日のためにとったホテルまで
歩く ゆっくりと
お互いの指と指を絡めあって
強く
いつものひとり旅では
どんなに酔っても
チェックインは自分で
今晩は
貴方が住所と連絡先を
聞かれている声が
酔った耳に心地よく
響いている
8階
都心のど真ん中なのに
とっても静かなここ 目白
部屋に着き
時計を外す
ふたりの時計は
同じ
アニエス・ベーだった