裸の血
ゆるこ



染められたわたしのうごめく爪に
一滴悲しい記憶とまほろばの景色が繋がるのであれば
それは川の流れのようにうねり、やがて男になるのだろう

明日の呼吸をあから始めるか悩めば悩むほど
けむくじゃらに揺れる胎内感度がわたしを飲み込もうとするので
いのちのなかに溶けているみずみずしい液体を
舌のうらに隠しながら
からすを求めるようにくちずさむ

鼓動を言葉で表すにはわたしの遺伝子は足りない
だからこそおどけて経験値を貯める
微笑んだえくぼの深さに意味を持たせる
そこに魂を見出だそう

みずになる
そして すこしだけ欲張りになる
そうしてたくさんのきょうだいを産んで
わたしはきえよう

それがいちばん美しく
卑しい。



自由詩 裸の血 Copyright ゆるこ 2010-11-06 09:52:47
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