魔法少女についての断章 1
真島正人
一晩中、街を歩き回り、疲れ果ててしまった。
ずっと昔、もっと子供だったころ、高校生のころに、深い憤りを抱えて、幾駅分も歩いたときのように。
あのころは、答えを必要としなかったが、今は答えを持ってながら、答えを得ながらも、その先の手法がわからない。
気がついたら、深夜のバスターミナルまで来ていた。
大阪行きの深夜バスが、出発しようとしていた。
俺はそれに飛び乗った。
どうしてだか理由もわからず、なんとはなく。
やがてバスは停車する。
見知らぬ街の、まだ夜の帳に眠るさまの中に投げ出される。
そこではいまだ、すべてが眠っている。
俺は、その町のバスターミナルの、無機質な待合室の、橙色のベンチに腰をかけて、体を小さくする。
肉体はこれ以上小さくはならないが、心なら、いくらか凝縮できるような気がする。
外で誰かがヴィオラかチェロのパート練習をしているような音が聞こえたような気がするのだが、それがただの錯覚であると思う。夜更けにいったい誰がそんなことをするだろう。
30分ほどそうしていて、まだ夜が明けない。
俺は、もう帰ることを考える。
夜が明けて、始発のバスが動き出すと、元の街に戻る。
それ以上に何も、することはない。
※ ※
そのころ、『僕』の日記の中では、新しい章が構築される。
こちらではない場所でしかそれは行われない。
新しい章では、ようやく魔法少女が、その影を見せる。