カプセル
宮前のん


ほら、珍しい薬だ
その男はそう言って
青いカプセルをくれた

エレベータの中で会った男だ
素性は知らない
ただ黒っぽい服を着ていて
線香のような匂いがした
効能を聞き逃して
もう一度聞いた時には
男は降りた後だった

奇妙なカプセルだ
好奇心をそそられる
若返るのか死ぬのか
だが飲む勇気がない
捨てるわけにもいかず
途方に暮れて

仕方なく次の階で
乗ってきた若い男に

おい、珍しい薬だ

こう言って手渡しておいて
急いで次の階で降りた






未詩・独白 カプセル Copyright 宮前のん 2004-10-23 22:34:39
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