あっちゃん
yumekyo

あの子の
頭脳はノーベル賞級の学者も認めるほどだ
そのくせ
恋に落ちたら
頭脳も体も
全部溶けちゃう

あの子の
恋はいつも正面衝突
背の高い男が好みで
体当たりして 
懐に飛び込んで
そして真っ直ぐ男の瞳をめがけて
大きくて形のいいふたつの瞳から
星型の光を放って
男の方がしっかり受け止めてしまったら
もう あの子の勝ち
すかさず喉元に刃を突きつけて
この手を離したら刺し違えるといって
強請る

あの子はそんな
恋しかできない
僕も含めて
今までの男はみんな臆病で
両手で思い切り
あの子を突き放してしまったから
恋の終わりは
あの子は何時も
人目をはばからないで街で泣いて
メイクも落ちて
おうちに帰る

今回 あの子を受け止めた
あっちゃんは今から大変だろう
既にあの子の
星型の光線がボディーブローで効いていて
たまに逢っても
ガーッと家のソファで横になって寝ちゃう
あの子は
穏やかな寝顔のあっちゃんを覗き込んで
この男は大丈夫だと確信する
あの子はとにかく怖いんだ
あっちゃんに突き飛ばされるのが怖いんだ

僕には判る
あっちゃんは
過去の男とは違う
あの子もいずれ
刃を捨てる
そして
離れて並んで
歩くことを知るだろう
そのとき初めて
あの子は大人の
女になるだろう


自由詩 あっちゃん Copyright yumekyo 2010-11-01 23:50:12
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