アホのうた
ブルース瀬戸内

アホは言葉を知らぬ。
裏を表のことだと思い、
明日を昨日のことだと思っている。

アホは我慢を知らぬ。
悲しければすぐに泣き、
楽しければすぐに笑う。

アホは世界を知らぬ。
途方もなく大きな空間に
米粒ほどの自分を配置したり
途方もなく小さな空間に
エベレストほどの自分を鎮座させる。

アホは生き方を知らぬ。
東に行きたいのに西に行き、
北に寄りたいのに南で休む。
好きな物を食べるために
嫌いな物を食べてしまう。

アホは何でもできるふりをして
本当は何一つできない。
何一つできないふりをして
何でもできるほど器用ではない。

アホは空が晴れると上機嫌だ。
よく笑い、よく食べる。
曇りや雨は落ち着かない。
少しむくれて、食べ残しをする。

アホは冷房の効いた部屋で
エスキモーの生活に思いを馳せ、涙を溜める。
アホは熱すぎるコタツに体を預け
サハラ砂漠の行商に同情し、涙を落とす。

アホは言葉を探している。
アホは自分のことをアホではないと思っているから
適当な言葉を見繕って自分を着飾ろうとしている。

アホはアホだ。自覚が足りない。
自分に素直になれない者は、何も理解できない。
アホは孤高だ。下を見てはならない。
高いところで、下を見てはならない。

アホよ、太陽が昇ってきた。
歓喜せよ。


自由詩 アホのうた Copyright ブルース瀬戸内 2010-10-30 14:08:36
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