おぉ私の瞳を赦し給え
真島正人


おぉ
黒い服に身を包み
大げさな声でぺちゃくちゃとしゃべり
鳥の血よりも鳥の
モモ肉を好み
トウガラシの種を庭に植えては
庭の土を更新
し続ける者よ
お前たちのあざ笑った
現状を
睨みつける私の瞳を
赦したまえ
赦しがたいものを
赦し
舌の赤さの上に成り立つ
いくつもの
突起物を
硬い粉上の
蒸気圧で
崩すなかれ
おぉ
私の矛盾した瞳は
やがて無意味へと摩り替わり
他人の服のポケットに
入れられるだろう
私の瞳ははじめから
それ自体として不安げに
転がり続け
二十三回目の変異で
私のこのくぼみに入り込んだ
私のこのくぼみから電話線に繋がれた
目に見えない線で
私は私の喉の
声を操り
あなたと対話をしてた
ずっと



ある路線を
やってくる
みずいろの列車に
今日あなたは乗り込み
寒かったのでコートを着込み
そのポケットに
使い古した革の財布を
入れておいた
革の財布は
あなたのポケットの中で
考え込み
反省し
悔やみ
涙を流し
それからやっと
それ自体としての思考の質を
獲得した
その革の財布は
あなたのコートのポケットの中で
タービンのように
ぶるぶる
ぶるぶると
高速で
回り続け
たが
あなたはそれに気がつかなかった
あなたはそれを
出し忘れた手紙の残滓かあるいは
列車の
よくあるがたごとと
勘違いをしていたのだ
あなたは
考え事の最中
ふと目をあげて
車窓から見た
……唐突な
海の青
ある路線が一度だけ見せる
群青の
窓の外の海を

海にはいくつもの
突起物があった
あなたはそれを
波の悪戯だと思った
波の悪戯にしては
妙に
鳥たちが
集まっていたが
気にするほどのことではないと思った
(事実その通りなのだ)
ので
すぐに目を閉じて
新しい
思考のテーゼへと
移行を始めた



自由詩 おぉ私の瞳を赦し給え Copyright 真島正人 2010-10-27 00:36:34
notebook Home 戻る