仔の眼
高梁サトル


冷たさを増す風に震える
荒野の先のやわらかな双丘をそのままに
奥に流れる寂寥とした音色に耳を澄ませている
何処かに隠した水瓶から溢れ出す
指先を濡らすほどのちいさな泉を大切に護って

青天から零れ落ちる七色の鱗が反射している
古びたカレイドスコープを覗くまなじり
煌く世界が他の何も映し出さなくとも
途切れた系譜の線上で途方に暮れるくらいなら
互いに向けたレイピアの切っ先を眺めて

ふたつあるものをひとつずつ捨てても
ひとりにはならないヒトの仔の眼

長い雨期のうちに洗い流された豊饒の大地で
鉛の果実を宿した樹木は空腹を満たすことはなく
灼けるような陽の光を遮る葉影だけが儚く揺れる
戻らない時間軸の上で途方に暮れるくらいなら
片眼を閉じて古びたカレイドスコープを覗いて

温かさを増す指先が震える
荒野の先のやわらかな双丘をそのままに
奥に流れこむ白濁の音色に耳を澄ませている
何処かに隠した水瓶から溢れ出す
指先を濡らすほどのちいさな泉を大切に護って


自由詩 仔の眼 Copyright 高梁サトル 2010-10-24 05:45:05
notebook Home