ルソーの月
salco

蒼穹も黄金の砂丘も皆寝静まって
全ては動かない
ひと棹の楽器も横たわっている
微風さえもが画布に張りついて
夢の ゆ の字

黒い少女の纏う長衣の
この世ならぬ配色は
仄かに艶めかしい輝きを発しながらも
色とりどりな出来たての棒飴のような
その艶は
内へ内へと己を秘めて行く
肉体の に の字
しーっ   お静かに

何ひとつ動かない
何ひとつ音のしない
唯、冴えた高空にルソーの月が
煌々と照るばかり
唯、果てしない静寂の中に
眠れるジプシーの立てる
厚い長衣の下にしまった肉体の
熱い内奥から洩れる
安らかな寝息

それからコバルトの水辺
月光は水面に踊る
それからライオンのたてがみ
銀色の糸と微風の調べ
生糸ほどの金属音

ジプシーは眠っている
灼熱の歌いを
その長衣の下の内奥と
火照った指先にしまって
唯、ルソーの月が煌々と夜を照らすばかり
唯、安らかな微かな寝息が洩れるばかり
砂漠の寝息までもが聞こえましょうよ


自由詩 ルソーの月 Copyright salco 2010-10-24 05:33:03
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