ヤノマミ
アラガイs


奥深い森のなか
大蛇のような泥の河を下り
僕が猿の真似をする
ヤノマミがそれを見て笑う
彼らはよく知っている
人間がそのむかし猿の王者であったということを

僕は踊る。覚えたてのベリーダンスさながら腰に巻いた椰子の葉っぱを振りながら
ぬかるんだ地面を裸足でしっかりと掴み、右から左へ左から右へと周りながら何度も何回も狂喜に頭を振り乱して素っ裸で踊る
椰子の葉の隙間から僕のダラリと伸びた性器が太股にぶつかる度 ヤノマミたちはそれを見て笑う 否 僕のみっともない性器を見て笑うのではない
彼らは 生まれたときから裸族だ
きっと僕が 弱々しい猿の姿に見えたからに違いない 。

ヤノマミは月と大地に暮らす 森の神だ
精霊とともに暮らし精霊とともに死んでゆく
陽が刻を告げ 月が闇を告げる
星に生きるヴェーダ
彼らにはトプカピ宮殿もスルタン大王も存在はしない
水魚を食べ弓狩りをし預言者の神に祈り感謝する
恍惚と赤い実の成れば魔草に陽を忘れ狂舞し
蛇の沼のなかで剥き出しの蟻蜜と戯れ交わるおとことおんなたち
耳を刺し木に記し
子を産み子を棄て人を育てる
ヤノマミは裸族だ
わたしを見つめて笑う
ヤノマミの
森の神に言葉などはいらない







自由詩 ヤノマミ Copyright アラガイs 2010-10-22 03:54:29
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