軽妙なるクロニクル
豊島ケイトウ


 生まれたばかり――
 あまりにもまぶしかったので
 まぶしい と
 叫んだはずなのだったが

 揺籃期――
 プロレタリア文学だと称する
 ひなびた小説を口に入れるが
 不味くてすぐに吐き出す

 年端も行かぬ頃――
 ボタンを押し間違えて
 エレベーターの向かった先に
 鬱蒼とした女の人がいた
 ここはかつて赤線だったのよ
 そう言って僕の頬を撫でた

 成人式を迎えて――
 やもめのヤモリと知り合い
 メールアドレスを交換した夜
 さっそく告白される

 そして今現在――
 純真無垢なる圏外に向かって
 ギアをトップに入れる
 父親が血相を変えて
 頼むから左には行くなと叫ぶ


自由詩 軽妙なるクロニクル Copyright 豊島ケイトウ 2010-10-21 16:32:19
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