Whale song
月乃助

夜空から剥離した星明かり
星騒に眠られぬ夜


人知れずやってくる 孤独は、
ただ一人でいることでも
まして、理解されずにいることでもないのです


それは、答を待ちわびるということ
( 心に打たれた楔のようなものから )


静まった 部屋


一人は愛欲のため
二人は生きるため
私の乳房を吸う/吸った 家の男たちは
翡翠色の月の下に眠りついた

一人は今日に疲れ
二人は遊びに疲れ

寝息の波の数を一つ二つと数えながら
まどろみしかやってこない夜に
星屑のベッドに横たわる


褥を覆う
無限な夜空の広がりに
人は、有限なものしか見ることができなかったはず
星を繋げて星座を生んだように


今宵も

私の内に、

なだらかな背の流線をみせる鯨が、目覚める
月光の光りの帯に交わりながら
その背にある無数の傷跡 その文字の羅列に
答えを捜す


鯨は潮を噴きながら 息をつき
息をつきながら 鳴き声をあげる
それは、旋律のある水を伝う歌声
私は、その声を昔どこかで聞いたのかもしれない
それで、こんなにも懐かしい


母のうちなる鯨
羊水の中の歌


だから 初めから偽りがあったのではないのです


私はただ海獣を理解しようと、
星の飛沫をあげるその鯨に目を凝らし
耳を欹てる
暗号を解く研究者のように
眉に皺をよせながら


どこまでも泳ぎ進んでいく
歌を止めることを知らずに


いつしか巨大な鰭を翼に変えて
飛び去ろうとする
舞い上がる夜空には、
名前を付けられた星たちが確定されたまま
異物を見るように
眺めている


私は、
鯨 それが、
星屑の鎖を断ち切るのを待っている
それが許されぬことなど
考えることをやめてしまって、








自由詩 Whale song Copyright 月乃助 2010-10-21 06:48:37
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