夕立ち
鈴木まみどり
この夏何匹のミミズが死んでいったのか考えています。
死んでから干からびたのか、干からびたことで死んだのか、
そういったことです。
それは世界の秘密、
幼いころはどんなことでも秘密のように感じていて、
いまは、あえて、秘密を得ようと努力する。
驚くべき湿度!
本は太ってゆき、
わたしは緑の匂いでむせかえる。
ページでは、言葉たち、意味のある言葉たち、
意味あるかぎ括弧、などが踊っていて、
たいがいのものは、
踊り続けると意味が飛び散って、
無意味、圧倒的無意味へと向かってゆく、
わたしはその無意味になった文字の美しい曲線を眺めています。
幼いころは、
このように、そのフォルムの美しさのみによって
文字を愛していたと思います。
道路で這ったまま死んでいったあなたたちに雨というものを教えてあげたかった干からびたことで死んでいったなら、なおさら。ミミズは命をなくしたのではないのですミミズという意味をなくしただけなのです。意味の死です。
道路には、できたてのひらがなが、
踊っています。