星よりとおく
たりぽん(大理 奔)

窓の外は少し北風の吹く夕暮れで
これから南極老人星を見ようと
大きなパラボラのあいだを抜けて
昔、友をなくした修行者が
涙で掘り抜いた文字があるという
岩屋のあるこだかい丘に
向かおうとしていた

これからであれば
ちょうど星の頃に着くだろうと
夕食かわりのおにぎりを差し出しながら
宿のおやじが言う

南の空のずっと低い場所にある
(その星を見ると長生きができるという)
みんなは必死で星を求めたけど
私はあなたの横顔ばかりみていた

  そらが宇宙を映し出す鏡になって
  絶対に手の届かない宝石をちりばめても
  気が付かなかった
  あなたは
  ばらまかれたあの星の周りを巡る
  違う惑星に住んでいることを

ふと、振り返ると
陽が沈んでから
ずっと同じ場所で見つめている
ひとつ星の明かりの下に
自分の影を踏んでいた


自由詩 星よりとおく Copyright たりぽん(大理 奔) 2004-10-22 00:50:35
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