砂の歌
あすくれかおす






じゃらじゃらと指があそんでる
手のひらをすべる舟でゆく
月のない 
だけど明るい砂の上



大切なものがさらさらと
くびれた小瓶に流れこむ
オールを漕いで 砂をさらって
時計に今をみたしてく



舟がきしむたびに 
足をつっこみたしかめる
誰かの一片が 
海のどこかに流れてる



浮上してった仲間もいる
ぱらぱらと黄金色をふりまき
望遠鏡で遠くを見つめ
振り返ったりしなかった



寄る辺ない深さ
砂底にむけて笑う
滲んで汚れた虹色が
透き通るように歌う



彼方に声が落ちていく
水面に火の粉が降るように
凍てついた夜も目をつむる
まぶたを閉じればあったかい



海には多くの時が流れる
それをもらったり
あげたりしながら
そこでは誰もが
こいで こいで
空に訪ねる
なぜ光るのか



ぼくがかえしにきた
自分の時計の中の砂
いつかだれかにすくわれて
だれかの今になればいい




いつも明るい砂の上
手のひらをすべる舟でゆく
じゃらじゃらと指があそんでる
振り返ったりしなかった












自由詩 砂の歌 Copyright あすくれかおす 2010-10-19 00:53:53
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