Akari Chika

美しい 庭

自分を見つめ直すための 庭

幾千枚の 緑の葉
針刺す布
手から 落ちて

ただ そこにある庭を 眺めている

季節は めまぐるしく動き

今 また
再生の春が鳴く

私は 古い椅子に寄り掛かり
編まれていく朝を
仰ぎみる

いくつ 歳をとり
傷ついていったとしても
この庭だけは
美しいまま

荒れていても
凪いでいても
命を含み続ける
海に似て

私は 額に手を当てて
諦めたはずの 涙をこぼす

許されていく
そう感じている

地球の奥深くに 潜ったような 暖かさ

手探りで
触れる 土から
誰の言葉より
相応しい慰めを得る

耳は毒
だから
封じて

美しい庭だけを 見つめている

私は 路上に捨てられた缶から
芽が出ることを 知っている

何も
ない
誰も
不在

そういう場所にこそ 奇跡がある

だから私 目を伏せて
頭を 空っぽにする
心まで 無にする

いつか その場所から
庭が生まれたら

優しくなれる 気がしてる

抱きしめた膝に
影が落ちて

天体の中心に 居るような 心細さ

それでも
風に弾む
一輪の 花から
誰の答えより
相応しい慰めを得る

愛されていく
そう感じている

いつか 時が過ぎ
変わり果ててしまっても
この庭だけは
美しいまま

そう信じている 今




自由詩Copyright Akari Chika 2010-10-17 02:45:04
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