私のかたちに似た木
豊島ケイトウ


 明るい心臓の奥深くに
 私のかたちに似た木が一本
 ひっそりと佇んでいる

 その木は、
 常緑と呼ぶにはいささか
 難解で
 落葉と呼ぶにはいささか
 陽気である

 そしてその木は、
 私の目を通して 天体を
 私の手を通して 薫風を
 私の足を通して 土壌を

 生きるために学び続ける

 私の地中に張り巡らされた
 根は、途絶えることなく
 脈々と受け継がれ――

 引き伸ばされる
 未完成のアルバムである

 遠い昔に取り残された
 すすり泣く少女の肩を
 そっと たたく日まで


自由詩 私のかたちに似た木 Copyright 豊島ケイトウ 2010-10-15 09:25:17
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