Nv0iceTと罪のないアヒル
石田 圭太
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ぼくがはじめてきみになかだしをしたよる
ぼくのなかのぼくはほとんどしんだ
額からこぼれ落ちてくる
角を拾い集めて
ひとつずつきれいに並べていくと
そこにはさみしい道が出来た
瞼からこぼれ落ちてくる
鱗を拾い集めて
ひとつずつきれいに並べていくと
そこにはやさしい道が出来た
快晴の空、大群で、美しい隊列をなしてアヒルが飛んでいくのを目撃した。それが夢じゃないと知ったとき、関係のない国では戦争が行われているんだろう。空爆。きみはどう?ふわふわとしたシルエットからは、やつらの性質を無視した温かいビームが飛んでくる。きみならどうする?みんな黄色い足をパタパタとさせて。
どこかでファンタジーが閉じて、それは大体おんなじことをいっていた。いいところと悪いところについて。ぼくがきみにはじめてなかだしをした夜、ぼくのなかのぼくはほとんど死んだけれど、明日になったら帰って来た。あれだけ手や足を書き足しても、特になにも変わらなかったけれど、あの時の産声は、天使の音楽みたいにきこえた。あんなに楽しい音楽は今までにきいたことがなかった。
いつか命だと思った歌を束ねながら、みんなで命のほうをみる時だって来るんだ。海にとっての海、陸にとっての陸、空にとってのそれが腕をとって別々の暮らしをしながら、それぞれの役目を果たしきって死ぬ。みんなそうしている。
みんなそうしている。