全裸の老婆
ハイドパーク

全裸の老婆が
鈍器を振り上げ
自らのあばらめがけ
グシャッと打ち下ろした
腐った板の胸は破け
闇夜の口からは
アスベストの霧が出た

胸の割れた老婆は
次に右膝を潰し
その次に左膝を潰した
達磨落しのように崩れ
正座になった反動で
前のめりになると
軽石の頭が取れてしまった

薄毛が白い老婆の頭
バリアフリーの緩やかな坂を
ストロボ撮影のように
残影を残しながら
転がり落ちていった

やがて
ボウフラの湧く
ちいさな水たまりに堕ち
相応のしぶきを上げ
瞼を閉じないまま
クルクルまわっていた

長く生きて死ぬとは
こういう事かも知れない


自由詩 全裸の老婆 Copyright ハイドパーク 2010-10-14 17:40:14
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