Cloudy,14℃
月乃助

雨に流された街は、
洗礼を受け
軽妙なステップを踏む猫が
聞き覚えのある昔の歌を
口ずさんでいる
 

秋はもう病んでしまっていたのです
倒れたショウカセンは、
( どんな英語の綴りでしたか? )
横になったまま 病は、
街路樹の 小さな班を無数に見せるマロニエの葉に
萌芽として始まり
疫病のように広がっています


幾億の富を積んでも、
止めることなどできはしない


色鮮やかな美しい秋の街は、
この残酷な季節のはざ間の後にやってくる
サンザシの赤い実さえも
それを知ってか 鉛色の腕を斑点だらけにして待っています


巡ってくる新しい季節に
それをためらうことなく、楽しむのです


含み笑いの
なんでもない小さな喜びに
昨日見た夢を思い出し
子供のような泣き顔になってしまわないように
黄葉の街をゆく


落ち始めた葉がまとった
雨の匂いに
寂れた街のくちびるが
知らない言葉を口ずさむ前に


帰る家を
誰もが求め 目指し
それでいて、この秋に触れないように
急ぐ 足音


気づけば
猫だけが、
舌打ちし
振り向き 少しばかりの
秋色の街で、


毒を舐めた
苦い顔をして今度は、
聞いたこともない安らかな歌を 
歌い始めた







自由詩 Cloudy,14℃ Copyright 月乃助 2010-10-14 06:01:47
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