なじみの中華屋さん
はだいろ

なじみの中華屋さんへ行き
日替わりを頼み
こころを込めて作るので
時間がかかる場合があります
という貼り紙を見つめ
ぼんやり
この世のはかなさについて考える


ふととなりを見ると
左の学生っぽい学生も
右の学生っぽくない学生も
食べながら
ヘッドフォンで音楽を聞いている
いや、
ヘッドフォンで音楽を聞きながら
食べているのだろうか


ぼくはびっくりする
ぼくには絶対にできない
こんなに美味しい米茄子炒めしを食べながら
どんなに美しい音楽で
耳をふさぐことも


いつから
音楽は
こころや耳やからだをひらいていくものではなく
こころや耳やからだをとじるためのものになったのだろうか


ヘッドフォンを外しても
学生は
ぼくと話し合えるなにかを
持っているのだろうか
いないのだろうか
気にしているのは
もう
とっくに学生でない
仕事がえりのぼくだけだ





自由詩 なじみの中華屋さん Copyright はだいろ 2010-10-12 20:09:03
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