国境ちかくの町かどの犬
石川敬大




 トゥクトゥクの傍らで赤い夕日を待って
 犬は
 なにもしていない真昼
 なにをしているのだろう、そこで
 みずからの首に首輪をつけ
 ひもをつないで

 犬って
 なにもしていない秋
 なにをしているのだろう
 なにをかんがえているのだろう
 いや、なにをかんがえていないのだろう


 太陽が傾いたままで真上にある


 トゥクトゥクの車輪の横の土をほり
 そのにおいをかいでいる
 犬は
 フッ
 と顔をあげる
 声のする方に耳をひとつ振って
 どこからかくる風のにおいをかいでいる


 時間は轍という川なのであり
 轍という川は永遠の瞬間でもあって
 どんなかたちもない


 国境ちかくの町かどの木陰に座って
 彼って
 なにもしていない秋
 なにをしているのだろう

 かんがえなければならないことなど
 なにひとつありはしない
 赤い夕日が映える川みたいにありのままに生きること
 そのほかにはどんなことも






自由詩 国境ちかくの町かどの犬 Copyright 石川敬大 2010-10-07 21:10:35
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