ある日の日のこと
番田 

誰も知らない湖の脇を、ひとり言葉を無くして私は歩いていた。あなたは子供のようだったけれど、でもよく見るとそのようには思えなかった。だからあなたはきっと僕の友達なんだと理解した。僕にとってきっと、身近で親しい人間なんだと思わされたー。僕らの見ているこの森の霧がこの湖の彼方に見えなくなってしまうまで、だからどこまでも手を取り合って、歩いていったー。



そんな言葉をつぶやいた私の口の中には甘みがあって、かつ酸味があってとてもうまいと思った。私は最初の日にそこで手に取ったサクランボの一房を口にした。秋の日とは、こういった窓の風景の色をさすのだ。言葉に出された窓の外はとても青かった。わたしの顔から思わず子供の時の笑顔が生まれる。街のいつもの電柱の脇を通ると、郵便局の横を通り、商店街の人ごみの中を私の体は貫いて行った。子供の笑顔にされた私は外に出ていったー。この街の中では「ありがとうございます」、という声が私の右や左から放射するようにして聞こえた。テーブルの赤い蓋をした箱の中には一房のサクランボが入っていると予想した。赤い蓋と青い蓋、緑色の蓋が目の前には存在した。中に何が入っているのか全く見当もつかなかったが、箱の中に入ったそれは高級なテーブルの上に載せられていたのだ。緑色の箱には小さなアボガドが入っていると予想した。私は足を前に出し、体を前に倒すようにして、箱の紙の中に存在するくだものを捉える。私は蓋の中へと手を使って、その中にあるものを私の手の中身にしようとした。蓋の青い箱の中にはきっと、青いブドウが横たわっていることだろう。


ぎしっ、と私は床を強く踏みこんだ。すると下の階に住んでいた中国から来た観光客が怒りだした。テーブルに盛られた大きな皿の上には氷が下に凝縮して敷き詰めてあった。突然遠くから「バカヤロー」という日本語の声が聞こえたので私は、子供の笑顔になって笑ったが、私には子供など一人もいなかった。わたしはそこでサザエとアワビを買うと、すぐに通りに出た。私には父がいて母もいた。兄と弟もいる。ーとても商品自体の値段は高かったが、売り子の娘がとても可愛かったので私は買わされてしまったのだー。テーブルにはサンマやアジ、切り身の鮭が所狭しと並んでいた。ー私が老人になったら相手が私ではなくても誰かの世話を見る人間は回りにいないのだー。そして安くはない、合計金額は一万円と、今日も手痛い出費をくらってしまった。私は皿の回りに青い氷が敷き詰められていたので、先週友達と食べた牡蠣のことを思い出した。私は街で魚屋に入ると、テーブルに並べられた魚を見た。…そこで友達の牡蠣をとって食べると、身は冷えていてとても刺激になり、とてもおいしかった。サンマが中でも一番長く、アジはその半分くらい。鮭は切り身なのでアジと同じくらいの大きさだった。


自由詩 ある日の日のこと Copyright 番田  2010-10-05 02:01:10
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