カレーライス
鵜飼千代子

昔 うちの父さんは
カレーライスにソースをかけて
スプーンをグラスに突っ込んで
上から下までぐるぐる混ぜて
それはそれはおいしそうに頬張っていた

ある日 それを友達に
なにげなく話した時に
恥ずかしい親とおもいっきり笑われたっけ

恥ずかしいから外では絶対やらないでよね
そう わたしが言ってから
ソースをかけることはない

好物の 楽しいはずの食卓は
もくもくと 流し込むえさへと変わりはてたのだ

だから私が父さんに
カレーライスを作る時
最後に愛情入れ足して
ごめんねと皿に盛りつける

何も知らない父さんは
お前の作るカレーはおいしい!
だなんて言うけれど

自分の好みの分量を
自分の加減で入れるのとは
自分でぐちゃぐちゃまぜるのとは
おいしさ違うことわかっている

それでも くしゃくしゃ顔の父さんは
おいしいおいしいとほおばるのだ

だからね お父さん

お父さんの好きな加減
ほんのちょっとのサジ加減
それが
私のカレーの課題



1997.7.30初稿
NIFTY SERVE FPOEM 改稿作初出


自由詩 カレーライス Copyright 鵜飼千代子 2010-10-04 22:14:12
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