地中の蜘蛛
海里

砂漠ですから砂の岸辺
いろいろなものが
打ち上げられもするのです

特に砂嵐のあとや
遠くの土地での季節の豪雨が
泥水の大海嘯を送り込んできた後などには

紙の本は水には弱い
水のみならず
湿気にも乾燥にも砂そのものにも弱い
けれども一緒に見つかったりもするのです

ギターンジャリや
梁塵秘抄や
内在への誘いや頓知の叡智

どこか砂の底に
アリジゴクに丸呑みされた図書館があって
誰かが
そこから
送り出して来ているのかとも思います
古、ガラス瓶に手紙を詰めて
海に投げ込んだ習慣のように

由緒正しくは無人島から
のちの時代には
ただ夢の試みとして

そんな風に、本を
そんな風に、本が

 
「砂漠の中の砂時計」より。


自由詩 地中の蜘蛛 Copyright 海里 2010-10-04 20:56:15
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