陽だまりのひと
恋月 ぴの
「ばかものよ!」
なんて言い切れるなら良いのだけどね
「もしかして」
そんな枕ことばで思いの丈をごまかしたり
まるで何事も無かったかのように
飼いはじめたばかりの小鳥の世話を焼いてみる
人生ってさ、長いようで短いんだ
それを誰かのせいにするのは簡単だけども
自分のせいだとは口が裂けても言えなさそうで
鳥かごのなかってほんとは幸せなんだね
ひなたに出した鳥かごのなか
小鳥は機嫌よさげにさえずっている
幕ぐらいは自ら引きたいものではあるけれど
「ばかものよ!」
そう言わない冷徹さと
言い切れない優しさ
小鳥のか細い脚の冷たさ、手のひらに伝わってきて
ひとりでは生きることも死ぬことも叶わず
それ故、ほんのりと甘い香りと首を傾げる小鳥の翼