リバーシ
はるな


誰だ誰だ誰だ誰だと喚きまわっているから私だと耳打ちしてやったらすうっとしぼんでいった誰だ誰が死んだんだ?私だ、菊の花まみれで立っている女。あれはもう腐ってるから食べないほうがいいと男。緑の肌の少女言う、あらかじめ設定された齟齬のもとで生活をしているのだから。だから?すうっとしぼんでしまう。今度は半分白、半分黒、の老婆が来て手を差し出すが、老婆の手の甲はまっ黄色だ。さしだされた乳白色の大腿骨をしゃぶっていると夜が落ちてくる。ばさりばさりと裾をひるがえして海のような夜。老婆が心臓を取り出して少しうたっている お前歌ならわかる言葉で唄え、なんでそんなに怯えてるんだ?すうっとしぼんでしまう。縮こまった老婆を裏返すとびっしりと広告が入っている。書籍、食品、化粧品、車、衣服、靴、鞄、電車、飛行機、貴金属、観光地、教育機関、食器、人材派遣所、政党、宗教団体、旅行会社、とにかくありとあらゆる広告が入っている。愉快になって裏返すとちがう広告が見れる、愉快になって裏返す、またちがう広告、愉快になって裏返す、またちがう広告、裏返し、広告、裏返し、広告、裏返し、広告、一体どっちが裏だ?一体いつからが裏だ?動転して食品広告を食うとすぐ激痛、だから、腐ってるって言っただろ?誰が?誰が言った?誰が裏返した?誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰が誰を誰に誰と誰で言った?私だ、と声がする、耳元から内蔵へ 私だ と。安心して、すうっとしぼんでしまう。





自由詩 リバーシ Copyright はるな 2010-10-03 23:30:32
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