百葉箱の怪
海里

校庭の隅っこで
秋風に吹かれて
あれは百葉箱
百片の言の葉を入れておく白い箱

言葉なんて
目に見えるものではないから
留め金をそっと外して開けてみても
なかは空っぽだ

ほんとはほら
赤い水銀の寒暖計がぽつねんと1本
それが主人公

でもそんなこと知らないこどもたちは
なんとなくそっと
小さな物を置き足してみたりするんだよね

砂場で見つけた貝殻
時計樹の果実
一束の人魂
草木四方山話

毎年大晦日
夜明け前に年神様がやって来て
のぞきこんで行く
いつもならふっと笑って立ち去るだけだけど

いつか本当に何かが宿るよ
百葉箱


自由詩 百葉箱の怪 Copyright 海里 2010-10-02 19:33:23
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