ぽつり
nonya


この世のうわずみを
あらかた舐めてしまった

僕は

もう

面白がらなければ
何も面白くないし
欲しがらなければ
何も欲しくない

この世のうわずみは
どれも同じような味だから

僕は

もはや

日記のようで詩のような
嘘っぱちは書けないし
詩のようで嘘っぱちのような
日記は書く気がしない

だから

ぽつり

としていればいいのだ
落ちた所で
じっとしていればいいのだが

ぽつり

としていられない
中途半端に淋しがりで
適当に情けない

僕は

混み合ったカフェの片隅で
甘い味しかしない熱湯に
猫舌を焦がしながら

ぽつり

とつぶやいていたりする
淋しい指紋にまみれた
液晶画面を眺めながら

ぽつり

僕のつぶやきが
窓ガラスにへばりつく

ぽつり ぽつり

誰かのつぶやきも
すぐにやって来て
窓ガラスにへばりつく

ぽつり ぽつり ぽつり

無数のつぶやきが
窓ガラスにへばりついて
自分自身の重さで
伝い落ちていく

僕の

ぽつり

もう

見えなくなってしまったけれど
なんとなく不安じゃないから
なんとなく不幸じゃないから

雨の日は嫌いじゃない





自由詩 ぽつり Copyright nonya 2010-10-02 12:04:34
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