ぽつり
nonya
この世のうわずみを
あらかた舐めてしまった
僕は
もう
面白がらなければ
何も面白くないし
欲しがらなければ
何も欲しくない
この世のうわずみは
どれも同じような味だから
僕は
もはや
日記のようで詩のような
嘘っぱちは書けないし
詩のようで嘘っぱちのような
日記は書く気がしない
だから
ぽつり
としていればいいのだ
落ちた所で
じっとしていればいいのだが
ぽつり
としていられない
中途半端に淋しがりで
適当に情けない
僕は
混み合ったカフェの片隅で
甘い味しかしない熱湯に
猫舌を焦がしながら
ぽつり
とつぶやいていたりする
淋しい指紋にまみれた
液晶画面を眺めながら
ぽつり
僕のつぶやきが
窓ガラスにへばりつく
ぽつり ぽつり
誰かのつぶやきも
すぐにやって来て
窓ガラスにへばりつく
ぽつり ぽつり ぽつり
無数のつぶやきが
窓ガラスにへばりついて
自分自身の重さで
伝い落ちていく
僕の
ぽつり
もう
見えなくなってしまったけれど
なんとなく不安じゃないから
なんとなく不幸じゃないから
雨の日は嫌いじゃない