ぼんやり
あ。

耳たぶがかさかさすると思ったら
どうやら蟻が一匹のぼってきてたらしい
上半身だけゆっくりと身体を起こす
よく伸びた夏草が足を覆いかけている


さっきまであおいろばかりだった空に
いつの間にか入道雲がもくもくと生えている
いち、に
二つ並んで夫婦みたいだ
こんな気持ちばかりのそよ風に
崩れるわけにはいかないと言わんばかりに
どっしりと根を下ろしてしまったかのように


少し向こうにひょろりと伸びた向日葵が見える
いち、に、さん
茎は三本花びらはたくさん種もきっとたくさん
誇らしく大輪に咲いていたこともあったろうに
今ではすっかり縮こまって俯いている


甲高い声が折り重なって耳に届く
いち、に、さん、し
四人の小学生がお喋りしながら下校している
あんな頃があったっけ、なかったっけ
何だか色々面倒になってきたので


数をかぞえるのは、もうやめた


いつの間にか茜色に染まった空と
いつの間にか薄くなっていた雲は
時の流れを思い出させるには十分で
お尻を払いながら立ち上がると
かすんでいた視界が少しクリアになった
、気がした


すばらしい瞬間だ
とても


自由詩 ぼんやり Copyright あ。 2010-09-30 22:04:59
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