夜と辺
木立 悟





実のつらなりが
水に映る
逆さになり
雨が来る


遠くと近くの震えが混ざり
小さな 音だけの雨となり
曇へ降る虹
曇から降る虹を見つめる


指のかたちの熱が触れる
水が離れた水を洗う
一度きりのものをもとめて
熱は幾度もかたちをなぞる


見える蜘蛛と見えぬ蜘蛛
互いの空を紡ぎあう
秋に狩られ
冬に狩られる


選択が
光の波に押し寄せる
閉ざしても閉ざしても
押し寄せる


流れぬ水を聴いている
自身の向こうの向こうを見ている
樹は
けして近づかない


やわらかなものに息を吹き込む
銀は銀に従ってゆく
空と空のはざまの水晶
雨と雨のはざまの水晶


水への一歩
水を踏み越え
星を巡り
うなじに触れる


わたしは わたしという夢から
覚めているか
手のひらの鏡を
裏返すことなく


夜は夜になり 火を燈し
さらに夜になり 火を吹き消す
うねりつづく道を
月は進む





























自由詩 夜と辺 Copyright 木立 悟 2010-09-29 01:04:39
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