誕生日の女
はだいろ
三年前の誕生日なら覚えている。
好きな女にメールをもらったから。
帰ったらプレゼントのキリンの置物が届いていた。
でも友達づきあいのつもりらしかった。
まぎらわしいことはやめてほしかった。
東京タワーが青かった。
二年前の誕生日なら覚えている。
池袋に、早川義夫のライブを見に行ったから。
バイオリンのHONZIが亡くなって、
その追悼ライブかなんかだった。
誕生日なんです、と言ったら、
CDにおめでとう、とサインをしてくれた。
一年前の誕生日なら覚えている。
渋谷に、ドニー・フリッツのライブを見に行ったから。
CDにサイン会をしていたけれど、
CDを買ったら、その後、デリの女の子を呼ぶお金がなくなるので、
もらいそこねた。
でもその子はとてもいい子だったので、正解だった。
今年の誕生日なら、
きっと、
何年たっても思い出せないだろう。
まったくどうしようもなく、
色合いの薄い日だった。
無理矢理はじめてのラーメン屋に入ったりしたけれど、
けっきょく、ぜんぶ吐いてしまった。
都内最安値のデリにさっき電話した。
どうゆう子がくるかはわからないが、
その子が、
今年のぼくの誕生日の思い出として、
残ることになります。
きっとしょうもない子だろうなあ。
それはそれ、
しょうもない一日を生きるのも、
きっとだいじなこと。
とてつもなく輝く一日を、
いつか、迎えにいくために。