たちすくむ
竜門勇気
公衆電話のはこのなか
ひざを抱えることすら出来ず
ただ泣いている
どんな理由があって
どんな喪失があって
泣いてるんだったっけ
どんな不条理があって
どんな口実があって
泣いてるのかはわからないけど
ほら
つながってる世界の
すべてが
君と同じさ
泣いている
怒っている
一人ぼっちじゃない
ほら
つながってる世界は
すべての
君を許して
笑っている
見逃している
その罪さえ
公衆電話の受話器を持って
重たいキーを押していく
たった十円玉一つで
人生で得たことすべてを
伝えれるサービスだ
世界の終わりの
乾いた最後まで
とっとくよりは
振り返ることもない過去を道連れにするよりは
少しだけましなのさ
少しだけだけど
少しを残すより
ずっと後腐れはないのさ
明日死ぬなら
明日消えるなら
ほら
つながってる世界は
僕らぐらいの大きさじゃ
揺るぎはしない
ほら
みんな眠るたび
今日を捨てている
違うかい
もう今日はお終いなのさ
もう君を助けに来ることは無いんだ
もう眠る前には戻れないんだ
少しだけ
言い訳を減らすために
体いっぱいにクソを貯めこんで
今日も走りまわった
公衆電話で自分のうちの
電話番号を打ち込みながら
喉の奥でのたうち回る泣き声を手のひらでせき止めて
ただ呼び出し音を聞いていた
僕は世界とまだ繋がっている
僕はまだ世界に触れている
ただいま留守にしています
発信音のあとに
メッセージをお入れください
僕は世界と繋がっています
生きていてもいいようです
僕は世界と繋がっています
生きていてもいいよ―――