夜の粉もすすけた泥
真島正人

空にすすけた泥が
まっくろになって
僕とあの娘にふる
この街は
薄汚れた街さ
煤をすすって生きてる

珈琲一杯分の
幸せを
喉に流し込み
反復する
時間と
運動をする
機械みたいにこんがらがって
ねじれていく
ここはどこなんだ
ここは
僕とあの娘の住む街

昨日の思い出の
良かった部分だけシチューに煮込んで
途中までは上手くいったのに
野菜を入れたら
ダメになった
なんだ
この匂いは
夕焼けが
鋭く尖って
あの娘の体に突き刺さっていく

うぅ
思わずうなってしまったよ
夜があけてから15時間ぐらいしたら
また夜がやってきた
夜の粉もすすけた泥さ
まっくろになって
僕とあの娘にふる

キッチンに
しゃがみこんで
今夜
あの娘は
泣いてしまったよ
いろいろな
不都合が折り重なって
まるで
金色のじゅうたんみたいだ
嫌なことばかり
はずれものにしておいたから
それがふきだまって
一つになってる
長い髪を
あの娘は振り乱し
両手で顔を覆い隠して
しくしく
しくしくと
何がそんなに悲しいの?
悲しいって何なのかなと
僕は
子供のように問いかけたくて
しくしく
しくしくと
口に出して
真似していたよ
そして

空にすすけた泥が
まっくろになって
僕とあの娘にふる
この街は
薄汚れた街さ
煤をすすって生きてる


自由詩 夜の粉もすすけた泥 Copyright 真島正人 2010-09-27 15:40:32
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