週末は　生憎の雨模様
花見は　生憎の雨模様
お盆は　生憎の雨模様
紅葉は　生憎の雨模様
名月は　生憎の雨模様

仕様がないと　布団に入れど
雨音しげく　眠れやしない
これこそまさに　寝るといいつつ
目ばかり冴える　泣き寝入りというもの


虚弱体質の子は体格のいい同級生を避けて
微細に刻まれた路地の町で
決まった女の子とゴム飛びして遊ぶ
背の低い平屋の連なる家並の土壁は崩れかかり
表に出られぬ子らをかくまっていた
三和土は常に湿っていた
生憎の雨模様の色をしていた

太平洋の荒波間近なる田舎町の工場で
ゼッケンをつけ番号で呼ばれ
二交代三交代混在のHaken Spiral
いまや我国の製造業を支えるのは
本曇り色の作業着を着た物言わぬ労働者たち
さながら　生憎の雨模様の色

遠い国境の海で明確な領海侵犯の漁船を拿捕して
容疑者を拘束して刑事手続へと載せる
日々淡々と追い求めるはLegal Mind
確立した適正手続で法治国家日本の灯を守るのは
本曇り色の制服を着た物言わぬ人たち
さながら　生憎の雨模様の色


雲ひとつない昼下がりに
ミヤコの三叉路にちょうど３台の高級車が相対する
かたや　再開発計画の進捗状況が報告され
かたや　生産調整のための首切り人数が発表され
かたや　容疑者拘束の妥当性が議論され
連中は夏雲色のシャツに夏空色のネクタイをあわせ
渋い夕焼け色の革靴を履いている
誰もが為替と株価のチャートをカバンに仕舞いながら
目的地に降り立ち誇らしげに軽く手を振る

生まれ来るのは
居場所を失い自宅にこもりがちになる童らと
すみかを失い豚汁の炊き出しに並ぶ若者と
プライドを失い自棄酒を呷る現場のプロフェッショナルの
生憎の雨模様に仕方なく眠るときのようなうめきに支えられた
汚い金とスポットライトに満ちた
晴れ舞台
これこそまさに　泣き寝入りというもの

仕方のないことなんだ
みんなとにかく晴れが好きで　晴ればかり追うのだから
生憎の雨模様の色の　衣装を着た人たちが物言わず作り支える
晴れが好きだから