クルトルハイムにて 
服部 剛

クルトルハイムという洋館の 
玄関前に聖イグナチオの像が 
跪いて祈る私の呼びかけに 
応えようと身を乗り出していた 

古い木目の壁の聖堂には 
肌の黒い求道者が座り 
祭壇の十字架にかけられた人を 
丸い瞳で観ていた 

( 神の声を聴くには? ) 

( 沈黙です・・・ ) 

その一言のみを聖堂に置いて 
求道者は出ていった 

右の窓を開いた彼方の空に 
夏の終わりの蝉と 
小鳥の囀りのコーラスが響き 

左のドアを開いた 
階段の下は 
人の心の未知なる部屋へ続き  

黒い肌の求道者の 
足音が 
みしり、と下りていった 








自由詩 クルトルハイムにて  Copyright 服部 剛 2010-09-25 20:57:52
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